尼崎・列車脱線事故とトレンドマイクロの失態との共通点。

はじめに尼崎で発生したJR列車脱線事故によってお亡くなりになられた多くの方々へのご冥福をお祈りいたします。

ここでは私なりに脱線事故と週末のトレンドマイクロの失態について考えてみます。個人的には根本的な部分での原因はもしかしたら共通性があるのではないかと想像しています。

毎日のようにニュースでは脱線事故の原因は何か、犯人探しが行われています。スピード超過によってカーブに進入したことによって脱線したという見方が強くなっているようですが、もっと掘り下げて考えなければいけないと思います。

  • この「スピード超過でカーブに進入したこと」は今回の事故の直接の原因だとしても、なぜ運転士はそのような行為を行ったのか。
  • 運転士は前の駅で40mのオーバーランを起こしてしまって、そこれによって運行ダイヤに遅れてしまっていた。その遅れを挽回するためにスピードを出していた。
  • 運転士は過去にもオーバーランを起こしていたため、処分に対する恐怖心があった。
  • では、なぜダイヤが遅れたことで処分されるのか。JR西日本として過密なダイヤの中で精密に運行することを運転士に要求していたからか。
  • それが、運転士にとってプレッシャーになっていたのではないか。


次に、トレンドマイクロの失敗は何が原因だったのでしょうか。トレンドマイクロの幹部の記者会見では、テスト漏れとチェック漏れの2つが重なったということでした。

  • なぜ「テスト漏れ」と「チェック漏れ」という通常のソフトウェア開発では考えられないような事態が発生したのか。第三者によるチェックなしにユーザに配布するということは信じられないこと。
  • トレンドマイクロのウィルス定義ファイルはほぼ毎日配布するスケジュールになっている。これはマーケティング上の理由や日々発見される新しいウィルスへの対処が理由だろう。
  • このようなウィルス定義ファイルの毎日の配布というスケジュールの過密化に対してこの組織はどのような対応を行ったのか。通常であれば、担当者の増員・開発プロセスの自動化など増える作業に対してそれを軽減する措置が必要になる。
  • しかし、実際には10数名程度の担当者だけで人海戦術によってテストされていたようだ。
  • これらのことによって担当者に対する精神的・肉体的なプレッシャーがあったのではないだろうか。


というわけでは、私の個人としては決してJR西日本の運転士やトレンドマイクロのウィルス定義ファイル更新担当者の個人的なミス・ヒューマンエラーであるとは思われません。ミスを防止するような雰囲気やプロセスを軽視した組織の問題によって、起こるべくして起きてしまった事故だったかもしれないということです。

では、両者(JR西日本トレンドマイクロ)はどのように対処しようとしているのでしょうか。最も問題なのは、この事故・事件によってさらに規則や処罰が厳しくなったり、プロセスの監視や管理が厳しくなることです。一般的には問題に対して蓋をするということで、このような対処になりがちです。しかし、厳しくするということは、人間的な『ゆとり』がなくなってしまい、さらに組織人にはプレッシャーとして襲い掛かってしまうことが心配されます。プレッシャーを強く感じるようになれば、人間はまたミスを起こしてしまいます。

以上のことは、私個人の単なる意見ですが、JR西日本およびトレンドマイクロが運転士や担当者を一人間として捉えた対策を行ってくれることを期待しています。