運命の人

山崎豊子さんの最新の文庫ということで予備知識もないまま読み始めた。
事実をもとに小説としたということで、名前・会社名などは実在するものが想像できる。


最初は、沖縄返還に関する外務省とアメリカの密約を通して、報道の自由・知る権利と
第四の権力としてのメディアの在り方を問う物語だった。


現在は、はっきり言ってメディアが最も大きな権力となっていると日頃から危惧している。
メディアが民衆を扇動し、世論を作り上げ、政治・社会を動かしている。
2009年夏の民主党政権誕生はまさにメディアによってもたらされた政権交代だと思っている。
個人的にそういう思いも強いだけに、1〜3巻を一気に読み進めることができた。


しかし、4巻を読み始めると、本作品のテーマがそれだけに留まっていないことを思い知らされる。
日本の中における"沖縄"という存在そのものを問う大きなテーマを持っていたのだ。
日本でありながら、太平洋戦争でも唯一の地上戦が行われ、今も米軍基地の負担を強いられている沖縄。
戦争、戦後、返還、基地問題と断片的に知っていたことが、一本の筋となって強く思い知らされることとなった。


数年前に沖縄に旅行した際に、仕事の都合もあって自分だけ旅行に途中参加となってしまい、
平和祈念公園ひめゆりの塔を訪れることができなかったことが今になって悔いやられる。


山崎豊子さんの作品らしく、壮大なテーマと長い時間を追いかけた物語であり、すごく読み応えがあった。

★★★★★

運命の人(一)

運命の人(一)

運命の人(二) (文春文庫)

運命の人(二) (文春文庫)

運命の人〈3〉 (文春文庫)

運命の人〈3〉 (文春文庫)

運命の人(四) (文春文庫)

運命の人(四) (文春文庫)