数年前に『クライマーズ・ハイ』をNHKのドラマで観て感動し、原作を読んだ。
それから僕は横山秀夫氏の作品、日航機墜落事故にはまり込んでいくようになってしまったきっかけであり、非常に印象的で大事な作品。
その作品が今回、映画化されるということで楽しみでもあり、また不安だった。
先週には原作を読み返して、公開初日である昨日、さっそく映画館に足を運んだのだったが、...。
う〜〜〜〜〜ん、"不安"の方が的中したというべきか。
この作品を映画化すると決めた時には、小説である原作と、それをほぼ忠実かつ高いレベルで映像化したNHKドラマとに比較されることは、製作サイドは認識していたはずだと思う。
だから、あえて正直に厳しいことを書かせてもらうと、映画を観終わった感想はガッカリしたということである。
- 原作とNHKドラマの両方に遠く及ばない。
映画のため約2時間という限られた時間枠も問題だったと思う。しかし、その2時間の中で何をテーマにしたかったのかというところは全くわからないのだ。
監督はこの映画を何のために作ったものなのか? - 原作を読んでいる人にとっては、あまりに印象が違うために戸惑うだろう。
特に白河社長の最後。もっともっと恫喝して、ワンマン社長ぶりをアピールしろよと。それまでのキャラが変わったように最後は悠木を自ら留めようとするところは興ざめした...。 - 最後に悠木がニュージーランドに息子に会いにいくシーンは必要だったんだろうか?
わざわざ少ない時間を切り崩して、あのシーンを追加した意味がわからないし、あの場面で終わった理由もわからない。 - この映画は『クライマーズ・ハイ』が必要だったのか?
日航機墜落事故を映画化したいのであれば、もっとドキュメンタリにした方がよかったのではないか。
原作では事故現場の描写は全くない。あえて悲惨な現場をあらわすことなく、事故の壮絶さを訴えている。
しかし、この映画では現場を映像化してしまっている。佐山の現場雑感は非常に良いのだ。その現場雑感を聞くだけで、情景が浮かんできて、涙が出てくる。
そこに、事故現場の映像は要らないのではないか?少女の遺体を抱いた自衛官の映像は必要だったのか?
とまぁ、さんざんな文句を書いたわけだが、良いところもいくつもあった。
- NHKドラマを観た僕にとっては、俳優さんのイメージは出来上がっていた。そのキャストをイメージして原作を読んだのだから、なおさらのことだ。
しかし、今回のキャストの方々は非常によかった。
悠木全権の堤真一、佐山キャップの堺雅人、等々力部長の遠藤憲一が特に良かった。等々力部長は岸辺一徳以外に考えられないと思っていたのだが、遠藤憲一さんも非常によかった。 - 原作にもNHKドラマにもないキャストとして、どこかのテレビ取材クルーの2人組がいた。この二人が日航機墜落事故に関してキーポイントとなっている事実や疑念を補足している。これは"日航機墜落事故"の映画として考えたときには良かったと思うが、恐らくこの映画を観る人のほとんどにとっては不要だと思う。ちょっと聞いただけでは、墜落現場への到着が遅れたこと、事故原因が隔壁かどうかということはわからないだろう。
原作は確実に星5つです。
★★★★★
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