これまでも日航機墜落事故に関連する本として、食指が動いていたのだが、文庫本5巻で約2,300ページという大作だけに二の足を踏んでいた。
でも、年末年始休暇が9連休と長かったので読んでみたのだった。
1巻目の冒頭に次の記事がある。
この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関・組織なども事実に基づき、小説的に再構築したものである。
1巻目・2巻目の"アフリカ編"を読む限り、こんなことはウソだろうと思ってしまった。
でも、3巻目の"御巣鷹山編"では、かなり忠実に事故を描写している。そして、JALの遺族係の方々のご苦労もリアルである。3巻目だけを読むと、恐らくノンフィクション作品としても通用すると思う。
そして、そのJALを立て直そうとするが、企業と政治家の癒着や不正が邪魔をするという4巻目・5巻目の"会長室編"では、やっぱりこんなことをJALという会社がする訳がないだろうと思ってしまう。
本書の内容のように、大会社であるJALで正しいことをした人間を会社の職権乱用でアフリカに10年も赴任させ、さらに大事故の後始末、会社の再建を途中にして、再びアフリカに赴任させるという非人道的な人事はとんでもないことだ。
いくらなんでもこれはないだろうと。
しかし、モデルになった方が実在するということをWikipediaで知って非常に驚いた。
"小倉寛太郎"さんという方で、本当に本作品で描かれているような人生を生きた方だった。
- 小倉寛太郎 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%80%89%E5%AF%9B%E5%A4%AA%E9%83%8E - 日本航空の組合問題 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%88%AA%E7%A9%BA%E3%81%AE%E7%B5%84%E5%90%88%E5%95%8F%E9%A1%8C
一企業が一人の人間の人生をここまで踏み潰すとはどういうことか。
企業という組織とそこで働く人間の関係とはこんなに差があるものなのか。
全5巻で2,300ページとボリュームがあるが、非常に濃い内容で一気に読むことができる。
少し古い作品ではあるが、一昔前に実際に起こっていた理不尽な事実を知ることができ、会社で働く組織人として私利私欲に走ることなく、僕も自分の正しいと考えることを遣り通すことができるのか考えさせられる良い作品だった。
★★★★★
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2009年秋に渡辺謙さん主演で映画化されるそうであるが、どうなるだろうか?
これほどスケールの大きい対策を2時間〜3時間と枠の短い映画で再現することはかなり難しいのではないかと心配だ。