片眼の猿―One-eyed monkeys

『向日葵の咲かない夏』は衝撃的なミステリー小説だった。
尾を引く後味の悪さが何とも言えない魅力があった。


その『向日葵の咲かない夏』の著者の作品『片目の猿』。


『向日葵...』のラストが印象的だっただけに、
読み始めてからすぐに、これは普通の人間の話なのかどうか、
またまた虫とか動物が実は主人公だったりするのではないかと疑いながら読み進めることになった。


物語のいろいろなところに散りばめられた伏線によって、余計にいろいろなことを想像してしまう。

  • 主人公の三梨は離れたビルの中の音も盗聴できる耳を持っている。
    大きなヘッドホンで隠しているし、タイトルが『〜猿』だし、やはり耳が異常に大きいのか。
  • 冬絵は大きなサングラスをかけて目を隠している。どうも遠くまで見ることができるようだ。
    そうなれば、異常に目の大きな人なんだろう。
  • 帆坂はなぜ頭に荷物を載せて運ぶのか。本当にモヤシなんじゃないだろうか。


物語の最後には、これらの謎・疑問は綺麗に解決する。
『向日葵...』のラストのように無理矢理感はなく、「やっぱりそうだよな」という納得出来る形で。


ミステリー小説だけど、ラストはちょっと感動した。
人間の見た目が大事なんじゃない。
『眼に見えているものばかりを重要視する連中に、俺は興味はない。』
そのとおりです。

★★★★★

片眼の猿―One-eyed monkeys (新潮文庫)

片眼の猿―One-eyed monkeys (新潮文庫)