ユニット

しばらくは小説を読まずにおろうかと思ったけど、やっぱり読んでしまうのだった。

佐々木譲氏の作品で読んでみたかった本。『ユニット』。


母親と赤ちゃんを殺す少年という、実在した事件をすぐに思い浮かべるようなものを題材としている。
実在の事件では、犯人の少年には死刑判決が下された。
しかし、本書では無期懲役となる。
そして、その少年は模範囚として7年で出所し社会に復帰する。
もしもあの事件の判決が死刑ではなく、無期懲役だったら... と考えさせられることになる。
本書では模範囚として出所した犯人も就職がうまく出来ず、社会に馴染めることができないため
再び犯罪の道を歩んでいくという犯人側の苦しみも伝わる。
しかし、それよりも妻と子供を殺された被害者である夫の苦しみは、さらに大きなもの。
いつまでも事件を乗り越えることが出来なくて、自暴自棄になっている最中に、
犯人の出所を知り、復讐に向けて自分の生きる目的を見つける。悲しすぎる人生。


もう1つ。警察官の夫による家庭内暴力の被害者である妻と子供が登場する。
この2つの事件と主人公が絶妙に絡みあって物語は進み、後半はページをめくる手を止めることができず
最後まで読み切ってしまう。


佐々木譲氏が得意とする北海道警察の不正(拳銃摘発、密輸)をさりげなく絡めてあるのも
リアル感を増している要因だと思う。


結末はハッピーエンド(?)。
心地良い疲れと安堵があり、読後感は良いと思う。


★★★★☆

ユニット (文春文庫)

ユニット (文春文庫)