私は貝になりたい

副題の“あるBC級戦犯の叫び”とあるとおり、太平洋戦争で戦犯に問われてしまった筆者の手記。


『狂える戦犯死刑囚』という短編が最初に載せられている。
この中に次のように本書のタイトルにもなっている非常に心にずしりとくる言葉が"赤木曹長"の遺書として記載されている。

けれど、こんど生まれかわるならば、私は日本人にはなりたくありません。
(省略)
どうしても生まれかわらねばならないのなら、私は貝になりたいと思います。

日本人にも、人間にも、牛や馬にも生まれかわりたくない。貝になれば何も心配なくすごすことができる。


非情な経験をし、死を目の前にした人間だけがわかる感覚なんだろうと感動した。


しかし、実はこれはフィクションであった。
加藤哲太郎氏は『私はなぜ「貝になりたい」の遺書を書いたか』という短編で、その"赤木曹長"が架空の人物でありフィクションであることが書かれている。

加藤哲太郎氏はBC級戦犯として死刑判決を受け、まさに死と直面して死刑をまつことこを経験した人物であり、この言葉の重みはまったく変わらないのかもしれない。
でも、僕にはちょっとガッカリした気持ちもあった。
こんなに"赤木曹長"に感動した自分は何だったのかと...。
たしかに、『狂える戦犯死刑囚』はノン・フィクションであるとは書かれていない。

ちょっとショックだった...。

★★★☆☆

私は貝になりたい―あるBC級戦犯の叫び

私は貝になりたい―あるBC級戦犯の叫び

なお、加藤哲太郎氏は、BC級戦犯としてただ一人だけマッカーサー元帥から裁判のやり直しを指示され、死刑を減刑されている。