今までたくさん伊坂幸太郎氏の本を読んできたのは、この『ゴールデンスランバー』を読むための布石だったのかもしれない。
日本の首相がパレード中に暗殺される。
その犯人としてなぜか主人公が疑われて、見知らぬ証拠が作り上げられていく。
昔の仲間とともに逃走する。
ケネディ大統領暗殺事件、その犯人として逮捕されたが射殺されたオズワルト、たくさんの疑惑があるが今も真相不明。
その日本版・現代版といったところだが、現在の監視社会・国家権力についても痛烈に批判しているところは、単なるミステリー小説という分野を大きく超えた作品だと思う。
確かに警察などの国家権力、テレビのメディアが相手になると、個人の力ではどうにもならないだろう。
現実に冤罪、国策捜査、劇場型事件と、同じことは日本ですでに起こっているのだ。
本書のストーリがそんなに現実離れした突拍子もないものではないということが恐ろしい...。
最終的に、犯人が誰だったのかは不明なままだ。
でも、そんな大事なことなんだけど、どうでも良いくらいにすがすがしい気持ちで読み終えることができた。
そして、伊坂氏の物語では音楽が重要なポイントとなっていることも多い。
- 『アヒルと鴨のコインロッカー』ではBob Dylanの"Blow'In the Wind"。
- 『死神の精度』の主人公の死神は音楽が大好き。
- 『オーデュボンの祈り』は音楽がない島が舞台。
このタイトル、ゴールデンスランバー("Golden Slumbers")もThe Beatlesのアルバム"Abbey Road"に収録されている名曲だ。
当然ながら"Abbey Road"を聞きながら、本書を読んだ。テーマソングみたいになるし、本なんだけど耳でも楽しめる。
★★★★★
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/11/29
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ここ暫くの間、伊坂幸太郎氏の著書を読み漁ってきた。
この『ゴールデンスランバー』は自分の中では非常に面白かった。
まだまだ伊坂氏の本はたくさんある。最近、単行本となった『モダンタイムス』とか...。
でも、せっかく面白かったので、しばらくは伊坂氏からは離れてみようかな。
今、他の本を読むと期待が大き過ぎるような気がするので。