戦後に起きた帝銀事件。
謎多き事件を松本清張氏が膨大な取材を元に小説として真実に近づこうとしている。
以前に松本清張氏の著書『日本の黒い霧』を読んで、帝銀事件のことを知った。
その毒殺の仕方といい、プロの犯行であることは明らかで、軍関係者の疑いが濃厚であるにも関わらず、画家の平沢貞通氏が逮捕される。
戦後のGHQが絡んだ複雑な政治状況が垣間見れる非常に興味深い作品。
"小説"と言いながらも、ほぼ実名・事実に基づいていてノン・フィクションに近い。
平沢氏は死刑判決を受けるが、実際には死刑を執行されることなく、獄中で95歳まで全うしてお亡くなりになったらしい。
誤認逮捕・冤罪の疑いが濃厚だっただけに、死刑が執行されなかったことはせめてもの救いなのかもしれない。
ただ、本書を読むと、いつの時代でも警察や報道関係者によって、"事実"が作られ世論が動かされるということは変わっていないようだ。
報道されていることをただ信じるのではなく、自分の中で納得しなければならないのだが、
TVなどからしか情報を得ることができない僕たちにとっては、これは実に難しいことだと思う。
★★★★☆
- 作者: 松本清張
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2009/12/23
- メディア: 文庫
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