責任に時効なし―小説 巨額粉飾

カネボウ粉飾決算事件について、当事者であった著者が"小説"的に書いたほぼノン・フィクションのもの。
"カネボウ"→"トウボウ"とするなど、会社名などは変えてあるが、銀行や監査法人も事件を少し知っていれば読めばわかる。


著者が当事者であっただけに、これまでの粉飾に関する小説よりも非常にリアルに描かれている。
特に「最悪の経営者ってこんなものか」とがっかりするくらいに、自己の権力を誇示し、問題が発生しても自分には責任がかぶらないように保身する姿は、醜いとしかいいようがない。
さらに、こんな経営者に対して、文句一ついえない執行部たち。

本書の中にはこんな印象的な言葉があった。

「今回のトウボウの粉飾で抵抗もせず、黙認し続けた上級役員はたくさんいました。
その『黙示の許諾を与えた役員』と『身体を張って抵抗した財務経理担当役員』といったいどちらが罰せられるべきなのか?」

社長、副社長には逆らえない役員(逆らうと首だからね)という立場が非常に情けないと思った。
役員という立場は会社経営に直接携わるものであるにも関わらず、社長・副社長という権力の言いなりにならざるを得ない会社組織の実態は恐らくカネボウ固有のものではないと思う。
どこの企業も組織としてはこんなもんなんだろうなぁ〜。


一般の社員としては"上"に楯突いていくこともできるが、それが"幹部社員"という立場でも貫くことができるのだろうか?
自分自身への問いかけという点でも、本書は非常に考えさせてくれるものであった。

★★★★☆

責任に時効なし―小説 巨額粉飾

責任に時効なし―小説 巨額粉飾