手紙

東野圭吾氏の名作の1つ。(名作かどうかは知らない。適当に書いた。)
眠れない夜になんとなく読み始めただけだった。
個人的に東野氏のストーリは冒頭からのめりこむができず、しばらくがまんして読まなければならない。しかし、しばらく読むと、ガッツリと掴まれてしまうのだ。


この本のテーマは『犯罪者、加害者の家族への差別』。
かわいそうだが、これは現実なんだと思う。僕も恐らくそうなると思うし。
その犯罪の背景としてどんなことがあったとしても、やっぱり犯罪という結果だけを見て人を色眼鏡で見てしまうと思う。そして、その身内も同じ目で。
本書の犯罪者である兄も、弟を大学に進学させたい、そして、甘栗を食べさせたいという気持ちによって結果的に強盗殺人を犯してしまうのだが、周りはそういう背景・理由には全く無視である。
犯罪関係の本を読んで思うことは、やっぱりその犯罪ということだけでなく、『捕まった』という事実だけで人を犯罪者扱いしてしまうという怖さ。
例えそれが冤罪であったとしても、一度、逮捕されて報道されてしまえば、もうその人は一生"犯罪者"というレッテルを背負って生きていくことになる。報道されたことによって人生が決定してしまうということ。
(この本の内容は冤罪ではないのだが、)このように冤罪の場合でも、そお逮捕された人自身だけでなく、家族も同じように"犯罪者の家族"という剥がすことのできないレッテルを背負うことになるようだ...。


いろいろ考えさせられた小説だったと思う。

★★★★☆

手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)

個人的に考えさせられた点。
僕も同じように男二人兄弟の長男の方。
本書の長男は、弟のことを思うあまりに強盗殺人を犯してしまい、さらに返事のない手紙を書いて弟の人生を狂わせてしまい、最後には弟からの絶縁を宣言されるという心優しくも可愛そうな方。


歳をとっても、兄弟は二人しかいない。
たとえ、お互いに迷惑をかけることになっても、やっぱり兄弟であることに変わりはない。
僕の場合にはどうなんだろうか? 僕の弟だったらどうなんだろうか?
なんて自分の兄弟に置き換えて、こんなときにどうした方が幸せなのか、本当に弟のことを考えた場合にはどのような接することが良いのか、そんなことを真剣に考えさせられたと思う。もちろん、結果はよくわからない...。


絶縁状を突きつけた弟が最後には兄と対峙して、声も出ないということが物語っているんだろうけど...。