虐殺器官

SF小説というものを読まないもので、これまで伊藤計劃さんのことを存じ上げなかったことは非常に残念。
SFというとどこかリアリティにかけるところがあるので、読んでいてもあまりスピード(読書の)が上がってこないものが多かった。


しかし、この『虐殺器官』はSFなのにテーマも描写もすごくリアリティがあって、どんどんと読み進めることができる。
テロに対してこのような戦い方があったかという、すごいアイディア。
他国に攻撃できないように、自国内で虐殺を発生させるという、逆転の発想。


2020年代くらいが舞台なんだろうか。
あまりに突拍子も無いこともない程度に、
それくらいにはもしかしたら本当にこんな世の中になっているんじゃないか
と思わせられる世界が本書の中にはあった。


読み終わった後に、本書の巻末にある"著者経歴"に次の文章を発見する。
『1974年東京都生、武蔵野美術大学卒、2009年没』...。
癌のために病死されたとのこと。


これまで僕が伊藤計劃さんのことを存じ上げなかったことは本当に恥ずかしい。
これからたくさんの作品を読みたいと思って、最後のページを読み終わったのに、
それができないということは非常に残念で仕方ない。


★★★★★

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)