乱反射

面白い。


最初は訳が分からない話が、どんどんとつながり合っていく。
複数の主体からみたストーリが並行進行し、絡み合っていくというのは、
珍しいテクニックではないが、何か巧みを感じることができた。


愛犬の散歩の時にフンの始末をしないお爺さん。
我が子を見返そうと、自然保護を訴えようとするけど、そんな実力もないオバサン。
病弱な故に、風邪で緊急夜間診療を受診するようになる、勘違い大学生。
車の運転が超下手くそなのに、家族に大きな車に変えられてしまう可哀想な女性。
潔癖症すぎて、子供にも妻にも触れることができなくなったのに、なぜか造園業をしている男性。
責任感もないのに、一人前のプライドだけは持っている市役所職員。
医療責任を放棄して、患者よりも自分のことを優先する医師。
...
などなど、たくさんの登場人物がそれぞれの我儘によって日常を送っているはずだった。


そうした中で、法律違反とまでは言えない些細なルール違反・マナー違反が、
運悪くいくつか重なってしまうことで、幼い子供を亡くす事故につながっていく。
その原因を探っていた父親自身が自分も同じ部類の人間だったんだと気づくところが非常に悲しい。
真実に近づけば近づくほど、誰も犯人として糾弾することもできないことを知る。


読み始めからエンジン全開にはならないスロースターターだけど、
途中から一気に最後まで読みたくなる本。現に、今週はちょっと寝不足。

★★★★★

乱反射

乱反射